[表]
斑雪 高嶺 朝光 鶯 啼いて居る
[裏]
碧 西駒ハ斑雪てし尾を肌ぬぐ雲を
※裏が碧梧桐の句
[説明文]
廣瀬奇璧《ひろせきへき》 河東碧梧桐《かわしがしへきごとう》 句碑
この碑の表は、高遠出身の鉱山業者で、高遠閣建設に尽力されたことで知られている廣瀬省三郎(俳号奇璧)の句で、遠く東の方、仙丈ケ岳を眺めて読んだものである。
斑雪《はだれ》 高嶺《たかね》 朝光《あさかげ》 鶯《うぐいす》 啼いて居る《な/い》
裏面は奇璧と交流があった河東碧梧桐《かわしがしへきごとう》の句で、西方、駒ヶ岳の残雪の雪形が、駒(馬)の姿に見えるようになった情景を詠っている。
西駒ハ斑雪《はだれ》てし尾を肌ぬぐ雲を
また題字の「嶽色江聲《がくしょくこうせい》は高遠出身の近代洋画界の奇才で、独特のスタイルをもつ書家でもあった中村不折《なかむらふせつ》の揮毫《きごう》によるものである。
[説明]
高遠城址公園から西の、木曽駒ケ岳の残雪をよんだ句。
昭和2年3月、『三昧』同人である医師の関口比呂志の招きで高遠に訪れ、以後数度関口氏宅に滞在。その際に詠まれた句か。
昭和2年6月『三昧』にて類似句「東駒に西駒のひだの深くに残る雪」が掲載されている。
また、『昭和日記』の昭和9年10月13日の項に、「信州高遠公園に句碑建立の事あり高遠は中村不折老の故郷/西駒は斑雪《ハダ》れてく尾を肌ぬぐ雲を/を書す 同地出身の俳人広瀬省三郎の依頼による」と記載がある。
句碑にすると依頼されて揮毫するのは珍しい。
場所:
高遠城址公園の南口の近く
最終来訪日時:2022.3.3
参考文献:
・『近代詩歌のふるさと 東日本篇』(国文学解釈と鑑賞別冊),至文堂,平成4(1992)年12月発行,p232
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